2013/09/20

椅子は中身。

※9/23(月) 店舗は開いておりますが(AM10:00~PM16:00)
  柳原不在の為、商品のご説明、オーダー・修理のご相談ができません。
  ご迷惑お掛け致しますが宜しくお願い申し上げます。


ダイニングチェア、張り替えを終えて、昨日納品してきました。

張り替えは外側(布地やビニール、革)に目が行きがちだけど、
外から見えない中身も大事。
傷むのは外側だけじゃなく、内側もボロボロになってる事が多いです。

ウレタン交換したり、テープを絞り直したり、バネをいじったり。

キッチリ直します。

内側は見えないから誤魔化す事もできる? 
実際、2回目、3回目の張り替えの場合に、前の仕事がひどい、、って事も。

でもそんな仕事はすぐバレる。 使ってたらすぐ分かる。
外だけキレイにしても内側がボロボロだとまたすぐダメになる。

いつもお届けする際には、見た目がキレイになるのは勿論、
「座ってみて下さい」 ってお伝えします。

昨日も座って頂いて、
「これでまた長く使えるね」
と、喜んで頂けて、嬉しかった。 キレイなご自宅です。


左が修理前、 右のチェアもそろそろご配達。 
生地に合わせて鋲の色も変えてみました。
生地を変えるとガラッと雰囲気変わります。


USED家具も増えました。 ベンチチェアが2つ。










長い方が 幅1550 奥行550  ¥16,800
短い方が 幅1100 奥行550  ¥14,700

どちらも座面高さは420なのでダイニングテーブルにも合わせられます。
国産家具です。 張り替え、ウレタン交換、木部のキズ補修 済。

来月もUSEDの1人掛けリビングチェア、面白いの出せると思います。

今日から剥がし中。


オーダー家具も色々作ってます。

月末~10月頭に続けて納品予定です。





今月の新潮、

西村賢太の長編 「疒(やまいだれ)の歌」 前編が掲載。


映画化もされた芥川賞受賞作
「苦役列車」 の続編。

続編と言っても西村さんの場合は全部が続編。
時系列が苦役列車と続きの久々の長編。


西村賢太という人はこれからますます面白くなる。

西村文学の楽しみ方について、少し詳しく。


何をもって私小説とするかは難しいけれど、
「私小説家」っていう肩書がこれほど上手く作用する作家も珍しい。

実体験を素材としてかかれた作品が私小説と言われるんだけど



作家さんが実体験を文学としてそのまま書いた場合、
まぁだいたいは暗くてみじめでグズグズした感じか、
世離れしたような崇高な精神世界の話、のどっちかになります。
どっちにしても実体験だからエンターテインメントには成り得ない。
脚色したり、色を付けたとしても、「私小説」と銘打って出すなら同じ。

楽しくて面白くて明快な毎日、それをまま書いたらそれはもう文学じゃないし。
そんなもん誰も読みたくないし。

もしも、「苦役列車」をはじめとする一連の作品が
私小説ではなく創作小説で、普通の兄ちゃんが書いていたとしたらどうでしょ?


「私小説です」 言った途端に作者は作品の中心になる。
どんな経歴のどんな人が、っていう部分に注目が集まる。
優れた作品を出せば覆面でもOKなのが文学。でも私小説はそうじゃない。


ナチュラルボーンぐずぐず野郎の西村さんの場合、
私小説である事で作品と自分、相乗効果で面白くなる。

確か短編では芥川賞を受賞した北町の話も出てた気がする。
自分と同じ道を北町貫多が作中で進んでいくわけです。

最近はテレビにもちょこちょこ出て、クズ発言を繰り返しているんだけど、
それも今後、作中で出てくるでしょう。
共演した人の事やマスコミ業界について、また強烈な皮肉を書くんでしょう。
映画の事はもうボロクソ言ってるけど作中でも言うんでしょう。
注目されるのは一時期の事で、また元のグズグズ生活に戻ったとしても、
それを恨み辛みをまぜこぜて、そのまま書いてやればいい。

最強でしょ。 どうやっても面白くなる。

北町が「糞みたいな番組だったが金になるから引き受けた」 って後で書けば万時OK。

何やっても、後で北町貫多が回収してくれる。
本が売れなくなったら藤澤清造よろしく野垂れ死んでもOK。



今作でも、

慶応のどう多めに評価してもせいぜい15点程度の幽霊みたいな彼女の影響で
サブカル系のイベントに足を運び、アングラ子芝居を眺めて、楽しそうに気持ちよく自分に酔ってる
金を借りた男前の専門学生を指して
 
 「さしずめ大手の出版社にでも入って文芸誌にでも配属され
 毎月毎月、一部のバカな読者と乞食根性丸出しの、自称評論家の連中以外は誰も読まない作文を
 せっせと媒介していればお似合いなのだろうが、如何せん、専門学校卒ではそれもまず
 入社の段階でもって到底叶うまい。」

と、色んな人を纏めてボロクソ。

青春を謳歌している同世代に対して、自信の敗北を認めつつも
未来永劫負けたままとは思っていない、人生の完全敗北を認めたわけではない。

こんな事を二十歳の北町が思ってるんだけど、
作中だけなら落伍者の美学。
でもこれって今の西村さんが書いてるわけで、それって壮大な皮肉にも見える。

見てみろ、俺の勝ちだろ? って。

本人と作中の主人公、相互効果で面白くなる。


この一連の流れが、ただのグズグズ野郎のエンタメ自伝ではなく、
私小説、文学として成り立っているのは
西村さんの文章と言葉の巧みさ、絶妙な自虐ユーモアがあればこそ。

今作は、「根が~にできている男」のギャップ自虐連発。笑うわ。

「根がどこまでもスタイリストにできている貫多」
「根が誇り高き貫多にすれば」
「根がなかなかのエチケット尊重主義にできている貫多」
「根がひどくデオドラント志向にできた男」


凄い人なんやで。達者や。 後編が楽しみ。

一部の馬鹿な文芸誌読者の予想ですが、
年末の芥川賞、これから12月までによっぽどの作品が出てこない限りは

小山田浩子 「穴」 で決まりやと思う。


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