2014/06/13

151回 芥川賞候補作の予想

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ワールド杯がはじまってしまいました。
相も変わらずイタリアを応援しております。
日本×イタリアが決勝リーグで見れたらいいな。


そろそろ芥川賞の候補作も発表です。
長男誕生、奥さんと息子が先月実家から帰ってきたりで、
上半期、あんまりちゃんと読めていません。残念。



3月の文學界(150回記念特別号)を読み返していて、
エッセイ特集の
 
諏訪哲史 「小説とは、芥川賞とはなにか」 ガツンときました。

たった3ページのエッセイだけど面白い。

以下抜粋(少し要約してます)

 小説について考える、ということが、すなわち小説である。
 小説を読むとは、小説について考える事である。
 小説を書くとは、小説について考える事である。

 小説についての作家の考えなんぞ知るものか、自分はその小説にあらわれた小説観なんぞを
 読むために小説を買って読んでいるのではない、すべての小説とはたんなる暇つぶしの具、
 読者の自由な妄想の材料、死への執行猶予である生を忘れさせてくれる気楽なモルヒネだ、と、
 そう吐き捨てる者があるとすれば、彼が読んだというすべてのものは、何度も繰り返すようだが
 やはりひとつとして「小説」であるはずがない。

 小説という言葉には2つのまったく異なる意味がある。

 Aの道。
 すなわち小説とはお話しであり、展開の妙であり、クライマックスであり
 オチであり、万人にわかりやすい娯楽であり、映画の原作であり、
 日常にとってなぐさめとなるものであり、
 読者の「小説とは何か」という思考をいたずらに発動させることなく。かつ多くの愉悦を
 彼らに与えられるか、その民主主義的な大衆、いわば多数をめざしつづける不断の運動である。


 Bの道。
 すなわち小説とは言語芸術であり、詩であり、批評であり、生そのものである。
 本質的な意味での「外国語の発明」であり、
 日常にとって危険きわまりないものであり、
 読者に「小説とは何か」という試行をたえまなく発動させ、かついかに多種多様な新しい解釈へ
 彼らをいざなえるか、その無政府主義的な個人、いわば言語の独立をめざしつつける不断の運動である。



その後もAとBの小説の違いについて書かれています。

Aはいわゆるエンタメ小説。 これの新人賞が直木賞。
Bは純文学、並びに文学。 こちらの新人賞は芥川賞。

諏訪さんは文学畑の作家さんという事も含めて、
文学を贔屓目に、エンタメ小説側を結構キツめに書いてます。たぶんわざと。


ここで書かれているのは、「エンタメ小説くだらねーな!」みたいな事ではなくて、

何が違うのか、どこに面白さがあるのか、それぞれ別だから一緒にしたら勿体ないよ、って事。

そこから終盤は、芥川龍之介は当時Bの中でも異端だったわけで、
だからこそ新人賞に名前が使われている。
それこそ『既存の枠を広げるような、文学の枠を広げるような』 そんな作品が受賞されるべき。
行儀の良い、型にはまったBが芥川賞取っちゃダメだろ、という話に。
同じ小説だけど、まったく違う種類。
楽しみ方も全然違う。

で、今回、第151回芥川賞

『春の庭』 柴崎友香  文學界6月号
『年上の女の子』 広小路尚祈 文學界4月号
『どろにやいと』 戌井昭人 群像1月号

このへんは候補常連。 
もう中堅だし有名だし、の柴崎さんだけどコレは取るかも。
戌井さんは川端賞も取ったしそろそろ取ってもいい頃。

んでんで、文學界&群像の新人賞受賞作、
どちらも候補入ってもおかしくない。特に熊。

『熊の結婚』 諸隈元 文學界6月号
『吾輩ハ猫ニナル』 横山悠太 群像6月号


むずかしいのが新潮の2作品

『聖地Cs』 木村友祐 新潮5月号 

震災後の汚染された土地、家畜。難しいかな。
しっかり向き合って、メッセージのある良い小説なんだけど、
難しいと思う。風評被害!とか気にすると。
「あいつはたっぷりセシウムを溜め込んでるからね、きっと不思議な味で美味いよ」
そんなセリフを牧場主が言うわけです。表面だけ抜き取られたら、、受賞は無理。

文學界 2月号の『ボラード病』 吉村萬壱
これも震災が絡んでます。抜群に面白い。
なんで漫画はダメで小説、文学ならOKなのか、も含めて考えさせられる。


『徘徊タクシー』 坂口恭平 新潮4月号
これも面白いんだけど、ちょっと長い。180枚。
三島賞の候補にも上がってました。ないかな。たぶん。

でも新潮から1つも上がらない事はなさそう。どっちか入るのか?


んでもう1つややこしいのが、いとうせいこう問題。
どうしても売りたい(であろう)業界サイドがしつこくノミネートするも連続で取れず。
まだぶち込んでくるのか。諦めるのか。

『フラッシュ』 いとうせいこう すばる5月号


第151回 芥川賞候補予想

『春の庭』 柴崎友香  文學界6月号
『年上の女の子』 広小路尚祈 文學界4月号
『どろにやいと』 戌井昭人 群像1月号
『聖地Cs』 木村友祐 新潮5月号 
『熊の結婚』 諸隈元 文學界6月号
『フラッシュ』 いとうせいこう すばる5月号

これで!


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